野球肘(やきゅうひじ)Baseball elbow

野球肘(やきゅうひじ)はスポーツ障害の中で比率が高い

当院に来院されるスポーツ選手の中で、やはり野球、特に野球肘の割合は非常に高いのであります。その障害の程度に差はあるとしても、その不安や苦悩は選手や保護者を苦しめていると思います。

実はわたくしの息子も小学校1年生から野球を始め、3年生の終わりに硬式、リトルリーグに転向し、中学生の時にはシニアリーグで硬式野球に励んでおりました。そのお陰というのも何でしょうが、息子が練習に励んでいるのを垣間見て、少年野球指導者というのを目の当たりにして、息子のチームメートも多数治療にあたるという経験も積ませてもらいました。

院に来院した患者さんを治療するだけ。というだけでは得る事が出来ない貴重な体験だった、と息子に密かに感謝するのですが、こうすればスポーツ障害が減るのに。という歯痒い思いをしたのも事実であります。

完成されたプロや社会人、それを目前にした大学野球の選手。甲子園を目指し打ち込む高校野球の選手。それらの原点となる、野球を始めた小学生達。そこでの障害は将来の夢を閉ざす可能性もあります。

それを減らす一助になればと願い、何かの参考になれば幸甚であります。

ボストンレッドソックスの松坂投手の投球時の連続写真

ボストンレッドソックスの松坂投手の投球時の連続写真

上記は、ボストンレッドソックスの松坂投手の投球時の連続写真であります。プロであるそれも松坂投手の写真を使った理由は後述するとして、投球動作は基本的に4期に分けられるのであります。

①ワインドアップ

②コッキング・フェイズ

③アクセレレーション・フェイズ

④フォロースルー・フェイズ

アクセレレーション・フェイズは前期と後期に分けられるので、説明は前期と後期でいたします。

コッキング・フェイズ

上記の写真は、ボストンレッドソックスの松坂投手の投球時連続写真のコッキング・フェイズの部分を切り取り拡大したものです。

この時、肩関節は過伸展、外転、外旋位がとられ、肘関節は外反しているのが分かると思います。

アクセレレーション・フェイズ(前期)

上記の写真は、連続写真のアクセレレーション・フェイズ(前期)の部分を切り取り拡大したものです。

この時、肩、肘が前方に出て、前腕と手が後方に残っております。この時期に肘関節の外反ストレス(肘関節内側の牽引、外側の圧迫)が強制されます。

アクセレレーション・フェイズ(後期)

上記の写真は、連続写真のアクセレレーション・フェイズ(後期)の部分を切り取り拡大したものです。

ボールのリリースまでの投球動作にあたり、肩はスピードをもって内方へ回旋され、前腕や手が丁度、ムチ状にしなって前方にスナップされるのであります。

フォロースルー・フェイズ

上記の写真は、連続写真のフォロースルー・フェイズの部分を切り取り拡大したものです。ボールのリリースはムチ状にしなった前腕が回内しながら前方に振り出されます。この時、肘関節には上腕骨外顆部や肘頭部に圧迫や牽引などのストレスが生じやすいのであります。

写真を見て頂くと、コッキング・フェイズからアクセレレーション・フェイズ、そしてフォロースルー・フェイズと一連の動作で肘関節に負担がかかっているのがお分かりになると思います。

野球肘の場合、内側型と外側型に分類されます。障害の詳細は次回より書くつもりなのですが、この投球フォームでのストレスのかかり方を知っていただくと理解しやすいと思います。

ここで、松坂投手の写真を使用した理由について説明申し上げます。松坂投手は押しも押されもしない日本のエース。WBCでも最優秀選手に選ばれ、甲子園での優勝投手。日本プロ野球界での活躍、メジャー移籍と野球少年の憧れの的であると思います。

写真を使用したのも投球に問題があるとかそういう事ではなく、凄い選手の投球フォームは真似したりとか、その投球を研究したりするのではないかとと思うのです。実際、コマーシャルに松坂投手のスローでの投球が出たり、番組を見たら投球フォームの解説がスローでされたりします。つまり、苦もなく松坂投手の投球を目の当たりにして真似をする事が出来るという事であります。

その投げ方は小学生の肘関節に負担になる

プロ野球選手のトレーニングは、小学生の体には負担が大きい?

我が子を松坂投手のように・・・とか、教え子を松坂投手のように・・・思っても不思議ではないし、期待するのは親として当然ではないかと思います。しかし、筋力もなく、骨も発育途中、骨化も充分されていない小学生にプロ野球選手の投球フォームを真似させたり、投げ方を教えたりするというのはどうだろう?わたくしは問題があると思うのです。

松坂投手といえばジャイロボールが有名です。ボールに対する抵抗が、従来のボールにバックスピンをかけるボールよりも少ないと言われ、螺旋回転するボールであります。実は、息子が小学校4年生の時、チームのコーチがジャイロボールの投げ方を教えていたのでありました。そのコーチは早々に辞めて、個人的に、良かった、、、思ったのでありましたが、その時は随分と考えさせられました。

息子の所属するチームの方針として、「父兄は指導に口を挟まない!」という決まりがあり、「その投げ方は小学生の肘関節に負担になるから止めて欲しい」とも言えず、息子に、「言う事を聞くな。」と言えば試合に出してもらえず、チームを辞めるしかないのか・・・家族で考えたものでありました。

よく、治療に来られた患者さんに、「そんなコーチの言う事は聞かなくて良いから!休んだらエエやないか。」言っていたのですが、チームに入ると難しいモンだ。よく理解出来たのでありました。

少し余談になりました・・・個人的な見解ですが、小学生の間、成長が遅いとか、細身であるとか、身体的に差があります。いくら運動能力が高くても、見たり聞いたりしたプロ野球選手のトレーニングをそのまま取り入れたり、投球フォームをそのまま真似をさせたりするのは、小学生の体には負担が大きいと思います。指導者の方、ご一考頂けたら嬉しく思います。

野球肘について【その2】野球肘内側型障害に続く

野球肘(やきゅうひじ)

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